『グランド・イリュージョン』2014

   イリュージョンとしての映画、奇術としての映画。

 

 若きマジシャン、ダニエル・アトラスは派手なパフォーマンスで観客を魅了する腕利きであり、自信に満ち溢れていた。助手として使った観客の1人の女性を部屋に連れ込んで、ことに及ぼうとしている最中、一枚のタロットカードが靴に仕込まれていることに気づく。

 3月29日、 4;44、ニューヨーク東エバン通り45

 

 謎めいた文言とともに挑戦的な瞳の描かれたタロットカードに魅了されたダニエルは、カードの指し示すままに指定の場所に向かうと、そこでかつての助手で、女性マジシャンのヘンリー・リーブスとであう。彼女はタロットカードをダニエルに見せる。いぶかしむ2人が部屋に向かうと、扉の前に1人の男が佇んでいた。メンタリスト、メリット・マッキニー。彼もまたタロットカードに導かれてやって来たのだ。しばし口論する3人だったが、最後に訪れた4人目のマジシャン、ジャック・ワイルダーによって扉の鍵は破られる。

 

 暗く汚れたバスルーム。寒々しい室内。4人はメッセージカードと白薔薇を見つける。ヘンリーが白薔薇を水差しに刺すと、水は漏れ出し床の凹みに溢れドライアイスを噴き出す。メリットが電球を回すと装置が作動しホログラムが像を結んだ。複雑な図形を描くそれは何者かからのメッセージであり、新たな世界への招待状でもあった。

 

 一年後、4人はフォー・ホースメンを称し、ラスベガスでマジックショーを開いていた。ショーの演目は銀行強盗である。無作為に選んだ観客の1人に瞬間移動ヘルメットをかぶせると、フランスの銀行に一瞬にして移動させる。男の前には札束の山。命じられるままに署名したカードとチケットを山の間に投げ込むと300万ユーロは勢いよくエアダクトに吸い込まれ、会場には札の雨が降る。

 

 4人は逮捕されFBIの捜査官、ディラン・ローズの尋問を受けるも証拠不十分で釈放される。ディランはフランスからやって来たICPOの女性捜査官アルマ・ドレイと協力し、トリックを知るために元マジシャンで今はマジックのタネ明かしをすることで財を築いているサディアス・ブラッドリーの助勢を仰ぐ。犯行を確信しているディランはフォー・ホースメンの次回公演に万全の準備を持って挑戦するのであった。

 

 ダニエル役はジェシー・(ザッカーだったっけ? アイゼンだったっけ?)バーグ。今回もあの早口は健在で、カリスマ的マジシャンを説得力たっぷりに見せてくれます。もう1人の主役のディランにマーク・ラファロ。しょぼくれた冴えないコロンボ、といった感じで(コロンボ自体がしょぼくれているというツッコミはまあ)この人は役所として、見せ場は最後の最後になっちゃうのは仕方ないところでしょう。メリット役にウディ・ハレルソン、ヘンリー役にアイラ・フィッシャー、そしてジャック役にはデイブ・フランコです。デイブはちょっと兄貴に似てますけど、あそこまで不健康そうな◯中顔ではありませんね笑。サディアス役にモーガン・フリーマンでこの人はいつも通りです。フォー・ホースメンのパトロン、アーサー・トレイラー役でマイケル・ケインなのですが、もうちょっとモーガン・フリーマンとの絡みを見たかったところ。監督にトランスポーターのフランス人ルイ・ルテリエ。そして脚本には個人的に懐かしみを感じるエド・ソロモンが入ってます。まだ無名で若かりしキアヌ・リーブスの主演作、ビルとテッドの大冒険の脚本の人ですね。

 

 冒頭、アイゼンバーグがカメラ目線で明らかにこちらの観客を意識してカードを見せ、それを当ててみせる、というけっこう挑発的なことをしています。(このトリックのタネ明かしはググってみてくださいね、けっこうすぐわかります)ただまあ手品的なことが映画という媒体でやれるのはこれが限界なのかな? と思わなくもなくて、ここから先はただもう力技のイリュージョンが展開されます。映画として詐術を展開する手法として、映像的にあるいは脚本的な演出でもって観客を欺く、というやり方があります。この映画でももちろんそういったことをやっているんですけど、正直、この映画より優れた映画はたくさんありますし、それよりもこの映画が重視しているのはイリュージョン的な映像スペクタクルです。ちょっと過剰かなと思えるようなCGIを駆使したマジックは私たちをめくるめく魅了してくれます。しかしその反面、映画の中で語られるトリックは説得力を失います。モーガン・フリーマンの語る真相がどれだけ白々しく語られることでしょう。そう、この映画において黒幕のもくろみがそこにあるということを考えれば、それは必然なのです。